※この記事では「リミテッド」を、ランダムで限られた選択肢からデッキを組み上げるルールと定義しています。
※この記事の目的は事実の整理です。キュードラの例を多用しているのは可読性を意識したためです。
リミテッドにおける除去の立ち位置
テンポとバリュー
どのデッキも相手よりテンポ・バリューで先行することで勝とうとしている、というのはとっくに理解していると思いますが、テンポとかバリューとかいうのは実際何を指しているのでしょうか。簡単にいえば「テンポ」は盤面を強くすること、「バリュー」は手札等のリソースを強くすることです。このどちらを重視するかによって、いわゆるデッキの速さが決まってきます。リミテッドではひとまずデッキを完成させなければいけないので、目の前のカードがテンポかバリューか見分ける必要があります。
タイムトリッパーは早く出せば出すほど機能し、相手よりリードして試合を進めることができます。当然、テンポの差も広がっていくというわけです。一方、エナジーライトはプレイするたび相手との手札の枚数差が開いていきます。この手札の枚数差のおかげで、最終的に分のいいゲームができるというわけです。テンポとバリューに共通して言えるのは、どちらも最終的な試合結果に結びついてくれるという点です。
では、このカードはどうでしょうか。
これをバリューを稼ぐカードだ、と言うのは、半分はあっているでしょう。しかし、完全にバリューだけのカードだとすれば、エナジーライトより1マナ重く色の制約も厳しいデモンズライトはエナジーライトよりも弱いということになります。ただこれは実際の評価と噛み合っていませんよね。デモンズライトの評価を高くしている要因は追加の除去効果に他ならないわけで、ここでテンポとバリューに加えて「除去の質」についても言及する必要が出てくるのです。
除去の本質は(何に向けた除去であっても)「減速」にあります。ボルシャックドラゴンをデーモンハンドで除去すれば相手の攻撃は1ターン遅れたことになりますし、ハンデスの可能性を考えてフェアリーライフを撃たない行動も、そのまま1ターンの遅延と言えるでしょう。デモンズライトにも同じことが言えます。相手の序盤の小型を焼きながら自分は手札を増やせるので、4マナで最大1:3交換を望めるわけです。これが弱いはずありません。この考え方を援用すると、除去コンがLOを狙えるのはデッキ内の除去の総数が多いために相手の決着ターンを山札が切れるターンより先まで引き延ばすことができるからだと説明できます。これはかなりハードルの高い要求ですよね。
質の高い除去
除去だけでは試合を引き延ばすことしかできないため、基本的に取り回しが悪いです。しかし、先述の除去、テンポ、バリューのいずれかがくっついた除去となるとかなり評価が変わってきます。「除去に除去がくっついている」とは「2体以上除去できる」ということなので、つまるところAoEのことです。これは除去できなくても最悪テンポ・バリューに貢献してくれる、相手の複数の行動を無に帰せるという点で非常に強力です。
質の低い除去、除去もどき(≠弱い除去)
上から順に「得をしづらい」、「単体では除去でない」、「腐りやすすぎる」という欠点を抱えています。ただ、こういうカードを取らされる場面は必ずやってくるので、デッキの受け入れを広くすることで何が来てもいいようにする(増川式)、デッキ内のシナジーを意識して弱いカードの居場所を作る(鈴木式)などの対策をドラフト段階で構えておき、周りよりも弱いデッキになる危険性を減らすことが求められます。逆にいえばこういったところにこそリミテッドの醍醐味があると個人的には思っています。
[例外]置き除去
置き除去とは、盤面に居座り続けることで永続的な除去を狙うカードのことで、上のバルホルス(デュエプレ)がわかりやすいでしょう。小型は盤面で腐り続けますし、殴らなければ盤面がどんどん削れてしまいます。置き除去の利点は先置きが強いこと、欠点はコスパが悪いことです。バルホルスを仮に出せたとしても返しのターンに除去されれば大損ですから、普通の除去よりもリスクが高いという点で優先されづらい傾向にあります(だから、天門で出す必要があったんですね)。
バルホルスはテキストから置き除去であることがわかりましたが、状況的に置き除去に「なる」ケースも実はあります。これは実際の盤面を見たほうがわかりやすいでしょう。
上の盤面は、4tに8/8スタッツのドラゴンが着地したことで、こちらの手札のミニオン(=クリーチャー)が腐ってしまったという状況です。こちらの手札に除去カードがないため、この8/8は常にこちらに「ミニオンを出すか出さないか」の選択を迫り続けられるので、結果として置き除去として機能しているというわけです(こちらミニオン出す→8/8がトレード→こちらのハンドが一方的に減る、こちらミニオン出さない→8/8が顔を殴るので死が近づく)。このような「結果的に置き除去になっているケース」はそうなることに気付かなけれな有効活用できないため、常に盤面の状況を考えてあげる必要がありますが、「結果的な置き除去」にはターンのわりにスタッツが高いという共通点があるので、頭に入れておけば意外に運用のチャンスは多いです。
除去を取る根拠
環境的に重要な除去である
要は強いカードはさっさと取れってことです。
現在のデッキが重い
デッキのカードが全体的に重い場合、それらを安全に着地させることが最優先事項になります。普通に試合を進めていれば相手の盤面が並び、こちらの盤面はスカスカという形になるはずですから、AOE+重いカードという組み合わせは重宝されています。
リソースが十分にある
これは特に単体除去に言えることでしょう。手札がカツカツのデッキでエターナルガードのような単体で試合を引き延ばすカードを採用し、運良く撃てたとしても結局相手との手札差で負けるのが目に見えています。
ほかの選択肢はテンポもバリューも不十分である
ま、そういうこともありますわな。
(キュードラ)自分のテンポを正当化したい。
いわゆる妨害ピックです。プチョヘンザを妨害しておけば相手の白緑ドラゴンに無理矢理除去を当てなくてよくなるため、自分のテンポムーブが通しやすくなるというようなのが一例です。ただし、これが成功しているかは明示的なものではないので、有効かどうかはよく考える必要があります。詳細については既存の解説を引きます。
『妨害ピックの難しいところはその妨害が確実にプラスになるとは限らないところです。……ハンデスが永遠龍を弾くときも、誰も永遠龍を使わないゲームはまず起きないので確実にプラスになるでしょう。では、バイケンの場合はどうでしょうか?……バイケンは永遠龍と違い最後の方に押し付けられて捨て山行きになりがちです。誰かが勝手に捨ててくれたかもしれないバイケンを抜き取ることはマイナスになるかもしれません。』
( 引用元:キュードラ:その妨害、渋くないですか? - ささがきなます )
リミテッドに除去は必要なのか?
はっきり言って、リミテッドの除去は弱いです。いや、「単純な」除去が弱いといったほうがいいでしょう。なぜなら、リミテッドにおいては手札の枚数が勝敗につながりやすく、それゆえ相手のアクションを返すだけのカードは効率が悪くなってしまうからです。それは実際肌感覚として共有されています(エタガとかがずっと回ってるのはそういうことです)。
しかし、だからといって「単純な」除去をプールから追い出すのはいい判断とは言えないでしょう。『(キュードラ)自分のテンポを正当化したい。』の項でも書いた通り、プールに存在しないことはそれをケアしなくていいことを意味します。これは単純につまらないだけでなく、似たデッキタイプによってしまう危険性を持っています。
まとめ
キュードラしたいなあ