はじめに:シールド戦のコントロールミラーは難しい?
シールド戦の花形といえばコントロールミラーでしょう。盤面の膠着が山札切れ目前まで続き、山札の少ない方が意を決してリーサルを組みに行く様は、在りし日のデュエルマスターズという感じでとてもスリリングです。それ故に人気も高いですが、同時に難解であるとも言われています。今回はそんなコントロールミラーについて考えていきます。「コントロールミラー」がテーマなので、本文中の「相手」も、全員コントロールデッキであることだけ念頭に置いてください。
「双竜戦記」環境でも、山札切れ直前までもつれるゲーム展開は珍しくありません。というのも、双竜戦記環境の主人公は明らかに赤抜き4cコントロールだからです。
直近のCSの結果を見ても、5cコントロールや4ct青コントロール、ラッカミッドレンジなども散見されるものの、母数の差からも*1やはり「赤抜き」をTier1と見るべきでしょう。したがって、双竜戦記環境で勝つためには「赤抜き」についての理解が不可欠です。
今回の記事では、「双竜戦記」シールド戦環境のコントロールデッキの中核を担う*2《モハメド・アント》*3に焦点を当てて、ミラーの大局観を概観していきます。そこから何かヒントを得ることが、今回の記事の目的というわけです。
振り返り_5→8のマナカーブが分厚い環境
この部分の話は前回記事を参照(URL:https://malnutritioustaro.hatenablog.com/entry/2023/05/10/205644 )
双竜戦記環境のカードプールは、マナカーブが偏っていることがひとつの特徴です。5コストと8コストが充実している代わりに6,7コストは情けないぐらい細いです。したがって、5と8で強くカードをプレイできるよう立ち回ることが今期の立ち回りの基本です。
8に綺麗につなぐことのできる《アント》はこのカードプールにおいて貴重です。しかも自身が強い5の動きでもあるため、コントロールデッキでは大変重要なカードであるといえます。とはいえ、そもそも《アント》の効果を覚えていない人も多いでしょう。そこで、次項目では《アント》の基本スペックを見ていきます。
≪モハメド・アント≫
基本スペック
≪アント≫の役割は大きく2つあります。
- 5→8のジャンプアップ
- パワー17000ガードマン
これはテキストに書いてあることなので当然という感じなのですが、では《アント》が立つことで相手目線何が起こるかというところまで考えてみましょう。
≪アント≫を出されたプレイヤーに起きること
1.テンポで大きく後れを取る。
相手の盤面に17000のガードマンが立っただけでなく2ブーストされているわけですから、5マナの半端なカードを返しにプレイしても何も起こりません。
2.マッハファイターが腐る
テンポを取り返す常套手段といえばやはりマッハファイターでしょう。双竜戦記にも《極輪の妖精》や《アカネ》といった強力なマッハファイターがいるのでこれで《アント》を返したいところ……なのですが、先述のとおり《アント》を越えるにはパワー17000以上が必要です。これらのカードはパワーが足りず、テンポを取り返すという役割を遂行できないのです。
上に、《アント》に対する応手として想定できるものの例を挙げてみました。《つわものどもが夢の跡》や《ラゼル》のようなゲーム自体を決め切るような強力なカードがあれば有利を取り返すことができるのですが、そうでなければ《ウィリデ》や《アント》で睨み合う展開に持ち込むか、《死煙》を当ててテンポロスを打ち消すかしかありません。
これを見ると分かる通り、《アント》の応手として《アカネ》のような《アント》と同格の強さのカードは腐り、《ラゼル》のようなより強いカードを投げなければシーソーを動かすことはできなくなるのです。まさにこの点が《アント》の強さであり、双竜戦記環境で重宝される理由、さらには双竜戦記環境のコントロールミラーが時間内に終わらない理由なのです。
まとめると、《アント》が盤面に出ることで、相手は8コストの強いカードをプレイするか《アント》に除去を当てることを強要されるのです。
コントロールミラー大局観分類
お互いに《アント》あり
ひとことで言えば膠着状態に陥ります。先に《アント》を処理/機能停止させるか、強い8コストのカードで優勢を築いた方*4に大きく有利が傾くゲームです。
この盤面では、1点ずつ刻んで《アント》をガードマンとして機能させる方針はあまりおすすめ出来ません。なぜなら、この盤面で行われていることは「お互いの《アント》への適切な応手を引くためのリソースゲーム」だからです。この盤面における「1点刻んでエンド」は、相手の回答札を引かせる確率を高めながらしかも相手に行動の選択権を譲ることと同値です。
したがって膠着状態を崩すカードを把握しておく必要があるわけです。
膠着状態を崩すカード
- 《アント》自体に触る
- 膨大なリソースを稼ぐ
- 一度にテンポを押し付ける
片側のみ《アント》あり
《アント》を立てた側がゲームの主導権を獲得します。立てた側は殴るゲームを選択してもコントロールを選択しても大きな裏目となりません。
一方、立てられなかった側は8コストでのスイングのために数ターン耐えることを迫られます。耐えた先に強い8コストが見込めない場合は相手が8コストをプレイした返しにリーサルを組むことを目標にゲームを進めます。
大局観に由来するプレイ:《アント》に除去を当てる
《アント》が既に着地しているならば除去を当てたところで後ろの8コストにパワーで負けるのではないかと思うかもしれません。しかし、この行為にはちゃんと意味があります。それは、「マッハファイターを応手として再び機能させること」です。《アカネ》のジャイアントメクレイド8や《デスプルーム》からの《十柱の超人》などは相手に主導権を渡しきらないための耐えとしては充分なパワーがあります。それを腐らせないために「持たざる者」が《アント》を除去するのは重要なのです。
お互いに《アント》なし
8マナまで大人しく動かすゲームか、《タイダルバーン》や《アカネ》、《ウィリデ》といった5コストの強いカードでシールドを割りに行くゲームのいずれかを選択します。
盤面を膠着させる要因がいないゲームなので、最も先殴りが有利であり、《タイダルバーン》のようなカードが活躍出来る展開です。
まとめ
シールド戦は、たとえコントロールミラーでなかったとしても時間切れとの戦いになりやすいです。それはデッキパワーの低さもさることながら、ゲーム展開への理解不足であることも要因です。「なんとなく不利になりそうなのが嫌だから」と、殴れば勝てるゲームを捨てて時間切れ両敗になるのはもったいないです。知識として殴れるゲーム展開かどうかを知っておくことは、見た目以上に実践的です。
また、プレイされる確率の高いカードをもとにゲームプランを考えることはリミテッドでは定石ですが、ことシールド戦ではあまり意識されていないように思います。「このSRはカードパワーが高い」や「今弾の赤は弱い」というようなデッキを組む前の段階の評価ばかりが重視され、ターンごとのケアするべきカードなどは軽視されているように思います。今弾でも、≪ゴルファンタジスタ≫や≪ラゼル≫のようなカードを強く使うためだけにゲームを延ばそうという考えが先行している人が多かったように思います。
プレイされる頻度からゲームプランを考えると色々見えて面白いよというリミテッド特有の”味”の話でした。
おまけ:デッキ構築_残り数枚の採用候補
デッキ構築の際、残り1-3枚に何を入れるかで悩んだ経験があると思います。双竜戦記環境4cコントロールでの採用候補について、メリットとどのような時に採用すべきかを簡単に書くので、参考程度にどうぞ。
《ドノラテップ》+《アイリプス》
メリット:スレイヤー+タップによって手札のロスを抑えながら相手の8コストを処理できる。
採用タイミング:相手よりも強い8コストの枚数が少ない。
《グ:ムユキバ》
メリット:4ターン目までのアグロムーブを止められる上、除去を当てられてもメクレイドの期待値がある。
採用タイミング:黒をまとめて取れている+序盤さえ凌げば勝てる。
《ラクロス》+《アサギ》、《コハク》
メリット:序盤の動きの最大値を上げられる+《ラクロス》のマナ回収である程度のトリガーケアも可能。
採用タイミング:8コストの枚数が少ない+白か黒の採用枚数が少なく、3c+1cのような形になりそうである。
除去呪文比較
除去呪文は基本的に足りない色の補充で採用する。除去範囲やコストなどの差があるのでマナカーブと相談する。
《ゼノミックバキューム》
メリット:手打ちが可能。5000ラインは4コストまでにはほぼいないため序中盤であればキープすることが正当化されやすい。
採用タイミング:《ステッキステーシー》などがないために呪文の枚数が少ないが《オンセサン》を複数枚採用したい。
《バイントラップ》
メリット:相手のマナが増えるものの単色緑かつ《オンセサン》や《モハメドアント》に触れる。
採用タイミング:相手のマナが増えたとしても頭数を減らすことに価値のあるデッキ(=《シャコガイル》、《つわものどもが夢の跡》を軸としたデッキ)
《死煙の霧》
メリット:8コストのクリーチャーであっても触れる。
採用タイミング:相手よりも5コストが薄い。
他にもあったかもです。
KMNZが5周年なのでバケモンみたいなカバーを3つ貼って終わりにします。カバーが気に入ったらオリ曲も聞きましょう☝