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書き手の義務__有料記事の価値を考える

 

 

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鮮度がよければそれでいいのか、みたいな話

PCスタンド買ったら人生変わりました。ヨドバシのポイントで全額賄えたので満足度にブーストがかかってます。

 

 

はじめに

ここ数年でカードゲームの競技シーンにおける有料記事の存在感は大きくなっているように思われます。強者の思考を数百円で買えるというのは、単にカードを購入するだけでは得られないメリットと言えるでしょうが、一方で購入したものの内容に満足できなかったという声も散見されます。一般的には、こういった問題ではどちらが悪いとも言えないのかもしれません。ただ、有料記事という名前から明らかなように、このやりとりには金銭が発生しています。お金をもらっている以上、記事を書く側が努力をするのが筋であると思います。

 本記事では、まず有料記事の価値がどこから来ているのかを見ていったあとで、有料記事に存在する問題点をなるべく具体的に列挙していきます。

用語の定義

 本筋に入る前に、いくつかの言葉の意味をここで確定させておきます。意味の取り違えによる読者の混乱を避ける目的です。

  • 有料記事:金銭を払わなければ記事の全体を読むことができないwebコンテンツのこと*1
  • 書き手:有料記事を執筆・販売している人、またその制作に関わっている人。お金を受け取る側。
  • 読者:有料記事を購入した人。お金を払う側。

有料記事の何にお金を払っているのか?

情報はすでに無料で転がっている

 そもそも、わざわざ他のカードを買えるほどの金額を払って記事を買う意味とはどこにあるのでしょうか。「環境デッキ」で検索すれば大会入賞デッキを見れますし、攻略サイトも充実しています。YouTubeなどの動画視聴サイトを使えば、最新デッキの動いている様子をいつでも、何回でも視聴できます。これらの無料コンテンツですらコメント欄が開かれているので、そこで疑問を投げることもできなくはないでしょう。それなのに、わざわざ、お金を出して、記事を買う理由は何なのでしょうか。

有料記事の価値

では、有料記事を買うとき、私たちは払った金額の対価として何を得ているのでしょうか。よく言われているのは「情報を得ているのだ」というものです。しかし、ただ単に情報というだけでは範囲が広すぎるので、この部分を少し掘り下げてみましょう。

一般的な有料記事には、最低でもメインの商品であるデッキ構築と各カードの採用理由、有利対面と不利対面、それらに対するプレイの方針などが書かれています*2。ここにさらに構築に至った経緯や採用候補、読者から受け付けた質問への回答などが盛り込まれていくことで、記事としての商品価値が上がっていきます。

 ふつう*3、新しくて有望なデッキを組み上げるためには思い付きだけでなく対面検証によるデッキ調整も必要になります。

 

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思いつきのデッキ構築を「強い」と確信するためには、調整に時間を費やす必要がある。

そう考えると、有料記事で買っているものは調整過程そのものと言えそうだ。

カードゲームにおいて一番強力なのは、人によって答えは変わるかもしれませんが、「自分が知っていることを相手が知らない」という状況を作り出すことです。新弾のカードを採用したデッキで大会に参加し、相手を出し抜くことなどがこの一つの例です。 その圧倒的有利状況に持っていくためにする行為こそが調整であり、その過程をお金で買えることのメリットは非常に大きいと言えるでしょう。しかもそれを書き手と読者だけしか知らないとなればこれは値段以上のアドバンテージを見込めるでしょう。これこそが有料記事の価値であると(少なくとも現状は)考えるのが自然でしょう。

 時間とお金の節約になってしかも勝てるようになるかもしれない!と書くと夢のような商品に見えてきますが、実際のところ、あまりいい印象を持っていない人も少なからずいるようです。記事の内容をめぐるトラブル、書き手の対応に対する不満など、なぜ実情は理想からかけ離れてしまっているのでしょうか。それは書き手の記事の作り方に問題があるからです。さらに見ていきましょう。

現状、有料記事の何が問題なのか?

商品内容が不透明

 中身がわからない商品を簡単に信用できない

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「中身は教えないけど絶対得するから!800円ね!」と言われて買いたくなる人がどのぐらいいるだろうか。

書き手としては購入前にデッキの全貌がばれてしまっては商売あがったりですが、読者的には購入前に得られる情報量が少ない商品はなかなか信頼できない物です。 記載しても差し支えない程度に載せられる情報の例としては

  • デッキの作成経緯(テンプレ構築の欠点を指摘して「それを克服した」と説明すれば差別化できていることをアピールできる)。
  • 執筆時点での書き手の環境認識などを添える(購入後の内容への期待感を持たせられる)。

などがあるでしょうか。一方で、記載してもあまり意味のない情報としては

  • 「調整段階では〇〇に有利」、「勝率7割」など、根拠に乏しいもの。
  • 「全く新しい構築」など、誇大広告じみたもの。

これらはむしろ読者の不信感を煽るので止めたほうがいいと思います。

読者に不親切

「中身は不安だけど思い切って買おう!」と購入に踏み切った結果、読みづらい文章に不親切な解説が現れたら、その人は二度と有料記事を買わないでしょう。読者に不親切な文章を書くことは読者からの信頼を失うことに直結しています。

読者に不親切な書き口にはいくつか種類があるように見受けられます。以下で三つに分類してみたので、それぞれ見ていくことにしましょう。

説明になっていない

「採用理由:必須だから」のなどがここに該当します。この一文を読んだところで「じゃあなんで必須なの?」という質問が残るだけなので、これは読者の疑問を解消したことにはなりません。買う側からすれば肩透かしを食らった気分になりますし、「なんでこんな文章で良いと思ったんだ」と考えるかもしれません。しかし、ここには少しだけ難しい問題が絡んでいると思います。

 それは書く側が「このカードは必須だから採用している」以上の書き方を思いついていないという可能性があるというものです(書く側の理解不足)。ここについては後述*4しますが、だからといって説明を放棄していいわけがないという注釈だけは添えておくことにします。

それっぽいワードでごまかしている

「それっぽいワード」というのには例えば「環境」、「カードパワー」、「強い」、「考えるまでもなく」などがあります。これらは使われ方や文脈によって簡単に意味を変えてしまうという点で共通しています。つまり、これらのような言葉を使うのであれば、「どういう意味で用いたいのか」を明示しなければ、親切な文章にはならないというわけです。

これだけ言われても正直よくわからないと思うので、例を挙げます。5cコントロールに≪鬼丸「覇」≫が採用されているとします。採用率の低いカードなので当然購入者は興味を持つでしょう。その採用理由がもし以下のようなものだったらどうでしょうか。

 

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初期イラストが一番かっこいいと思う。

「≪鬼丸「覇」≫はカードパワーが高いので採用しています。殿堂カードなので一枚しか採用できませんが、ガチンコジャッジで追加ターンを得られるのは考えるまでもなく強いですし、環境にも刺さっています。」

 

かなりがっかりすると思います。なぜがっかりしてしまうのか?この解説は結局読者の疑問に答えられていないからです。上の文では、以下の疑問点を解消できていません*5

  • 「カードパワー」とは何?
  • 他にも「カードパワー」の高いカードはいくらでもあるだろうに、なぜわざわざ「覇」を採用した?
  • 「考えるまでもなく強い」というのは本当?「考えるまでもない」ならすでに多くのプレイヤーが採用しているはずでは?
  • 「強い」というのは具体的にどういうこと?手札事故を緩和できるのも召喚するだけで勝てるのもどちらも「強い」と説明できるのでは?
  • 「環境」には具体的にどのようなデッキが存在するのか?
  • 「環境にも刺さっている」とは?環境に存在するすべてのデッキに対して強く出れるカードということ?

わずか二文の中に六個も疑問が湧いてきてしまいました。しかもこれらは踏み込んだ質問ではなく、説明不足による質問です。一度読んでも納得できない文章が親切な文章なはずがありません。自分の理解を押し付けても読者にはほとんど伝わりません。

文章を推敲・校正しておらず、読みづらい

 この部分は正直書きたくないのですが*6、記事の印象を大きく左右する部分なので触れざるを得ないでしょう。

  • 誤字・脱字を修正していない。
  • 「てにをは」が間違っている。
  • 文一つ一つが長い。
  • 一つの記事内で表現が統一されていない(同じものを二通りの表現で説明している)。
  • 難しい言葉を使おうとしている*7

挙げるときりがないのでこのぐらいにしておきます。いろいろ上げましたが、目指すべき水準は「小学校高学年が一回読んで理解できる文章」です。どんな読者にも同じレベルで理解できるよう、なるべくわかりやすく書かなければ誠意のない書き手だと判断されても文句は言えないでしょう。

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先ほど確認したように、読者は調整過程を求めて記事を購入します。当然、読者は購入前はあなたのデッキやその採用理由などについて何も知りません。そういう人たちからお金をもらって情報を提供するわけですから、書き手は普段よりも噛み砕いて説明する必要があります。例えば、「口笛の吹き方を教えてくれ」と聞かれたらどう説明していいか迷ってしまうと思います。普段何気なく理解して実行できるようになっていることでも、改めて他人に説明するには言語化して、それが相手に伝わるか自分の中でチェックするという二つの手間が挟まります。デッキ解説でも同じことが言えるでしょう。書き手がなんとなく採用したカードでも、いざちゃんと説明しようとするとできないということは起こると思います。そういったことをクリアしてあげることで、記事のクオリティは上がっていくのではないでしょうか。

 

有料記事の将来__悪貨は良貨を駆逐する

 「悪貨は良貨を駆逐する」とは「高品質な貨幣と低品質な貨幣が市場に混在すると、最終的に高品質な貨幣は市場に出回らなくなる」という意味の格言であり、もう少し平たく言うと「良くないものが溢れると良いものが出回らなくなる」という感じになります*8。有益な記事の方が現状多いかもしれませんが、上で書いたような部分をクリアできていない記事*9が出回り続けるならば、有料記事に対するイメージは落ちていきます。そうなれば有益な記事を書いていた人たちは記事を公開するメリットを失い、最終的に質の悪い記事しか出回らなくなるでしょう。

有料記事はゲームへの取り組み方に新しい一面を与えたかもしれませんが、同時にゲームに足枷を架けてしまってもいます。有料記事が長続きするかどうかは(もっと言えばゲームがコンテンツとして長続きするかどうかは)、書く側のモラルにゆだねられてしまっています。一回読んでわからないような文章を書いたり、お金儲けに走ったりする書き手が残り続ければ、有料記事は価値をなくし、忘れ去られるでしょう。

 

 

*1:YouTubeのメンバーシップ機能にも、一部有料記事のような内容を提供しているものがある。本記事では触れないが。

*2:この三つすら書いていないのに人から金を取るとすれば、それはあまりにも悪徳である。

*3:競技的に取り組むという意味で

*4:「文章を推敲・校正しておらず、読みづらい」を参照のこと。

*5:もっとあるかもだけどこれより少ないということはないので許して。

*6:誤字脱字、日本語の不備を指摘されたくないので

*7:これは前述した「それっぽいワードでごまかしている」に近いものがありますね。

*8:ここの意味の厳密な定義に対する反論はあまり歓迎していません。歴史に詳しいのは認めますがこの文脈ではあくまでも比喩として用いているのが一読して理解できると思います。

*9:読者に不親切な記事